自転車ですぐ疲れる。少し漕いだだけで太ももの前が張り、坂でもないのに脚が重くなる。歩いたほうが楽な気さえする。そんな相談をよく受けます。自転車の疲れは、体力より乗り方と止まる回数で大きく変わります。この記事では、自転車で疲れる原因を身体の使い方から整理し、太ももだけが張る理由と、今日から変えられる乗り方を理学療法士がお伝えします。
自転車の疲れは距離で決まらない
自転車で疲れたとき、多くの方は「今日は長く乗ったから」と距離で考えます。ところが実際には、同じ3kmでも疲れ方が大きく違います。川沿いの道を3km走るのと、駅前の道を3km走るのとでは、脚に残るものが別物です。
疲れの多くは漕ぎ出しで使っている
違いを生むのは、止まって、また漕ぎ出した回数です。一度スピードに乗ってしまえば、平らな道で速度を保つ力はそれほど要りません。脚に一番負担がかかるのは、止まった状態から動き出す最初の数回転です。
信号や交差点が多い道では、この漕ぎ出しが何度も繰り返されます。距離が短くても、漕ぎ出しの回数が多い日ほど疲れます。買い物や送り迎えのような街なかの移動で疲れやすいのはこのためです。
太ももの前だけが張るのは偏りのサイン
もうひとつの手がかりが、疲れが出る場所です。ペダルを踏む力は、本来は太ももの前とお尻の筋肉で分け合って出すものです。お尻がほとんど疲れず、太ももの前だけがパンパンになるなら、仕事が片方に寄っています。
この偏りは筋力不足とは限りません。サドルの高さや踏む位置で、身体が使える筋肉が決まってしまうことが多いです。ですから鍛える前に、乗り方の条件を見直すほうが早く変わります。
自転車ですぐ疲れる4つの原因
自転車の整備不良(空気圧の不足やチェーンのさび)でも重くなりますが、ここでは身体の側の原因を4つに分けて整理します。どれも自分では気づきにくいものです。
①サドルが低く膝が深く曲がっている
停車したときに両足がべったり着くよう、サドルを低めにしている方は多いです。安心感があるのは確かです。ただ、その高さではペダルが一番上に来たとき、膝が深く曲がります。
膝が深く曲がった位置から脚を伸ばす動きは、太ももの前の筋肉にとって負担の大きい動きです。しゃがんだ姿勢から立ち上がるのが、中腰から立つよりきついのと同じ理屈です。サドルが低いと、毎回の一踏みがこの「深い位置からの立ち上がり」になります。
②重いギアのまま発進している
変速つきの自転車でも、走っているときのギアのまま止まり、そのまま漕ぎ出している方が少なくありません。速度が出ているときにちょうど良いギアは、止まった状態から動かすには重すぎます。
重いギアで漕ぎ出すと、最初の半回転に大きな力が集中します。この瞬間に力を出しているのは、主に太ももの前です。漕ぎ出しの回数が多い道では、この半回転が何十回も積み上がります。
③上がってくる脚を乗せたまま踏んでいる
ペダルは左右がつながっています。右脚で踏み下ろしているとき、左のペダルは上がってきます。このとき左脚の力を完全に抜いていると、右脚は左脚の重さまで一緒に持ち上げていることになります。
脚1本の重さは、体重の6分の1ほどあります。体重60kgの方なら約10kgです。これを片脚ずつ交互に持ち上げ続けているのですから、太ももが早く重くなるのは当然です。
④ハンドルを握りしめて上体を固めている
ふらつきが気になる方や、子どもを乗せている方に多いのがこの形です。ハンドルを強く握り、腕を突っ張って上体を固めます。降りたあとに太ももだけでなく、腕や肩まで重く感じるならこれが関わっています。
上体を固めると、骨盤も一緒に動きにくくなります。脚の付け根が固まった状態で漕ぐことになり、脚の動きが小さく、力任せになります。体の力が抜けない状態に心当たりがある方は、自転車の上でも同じことが起きやすいです。
疲れの出どころを確かめる
4つのうちどれが自分に当てはまるかは、乗ったあとの身体で見当がつきます。いつもの道を走った直後に試してみてください。
降りた直後の太ももで分かること
降りてすぐ、太ももの前とお尻を手で触って比べます。太ももの前だけが熱く張っていて、お尻に変化がなければ、①か②が強く出ています。太ももの前と腕の両方が重ければ、④が重なっています。
乗ったまま確かめる3つの方法
- ペダルを一番上で止める:安全な場所で、片方のペダルを一番上にして止まります。太ももが地面と平行より上がっていれば、サドルが低い目安です
- 漕ぎ出し3回転を数える:発進から3回転の間に、太ももに「ぐっ」と力が入るかを感じます。毎回入るなら、ギアが重すぎます
- 手のひらの跡を見る:降りたあと、手のひらに握り跡が赤く残っていないかを見ます。残っていれば、上体を固めて漕いでいます
どれも筋力ではなく、条件を見ています。条件が原因なら、鍛えなくても乗り方を変えるだけで疲れ方が変わります。
理学療法士の視点|漕ぐ角度と止まる回数
ここからは、身体の仕組みの側から3つ補足します。自転車の疲れが太ももの前に集まりやすい理由と、漕ぎ出しが重い理由がここにあります。
膝が深く曲がるほど太ももの前の仕事が増えます
ペダルを踏む力は、足の裏から膝を通って伝わります。膝が深く曲がっていると、踏む力の通り道と膝の関節の中心が大きく離れます。この距離が長いほど、膝を伸ばす筋肉は大きな力を出さなければなりません。
膝を伸ばす筋肉は、大腿四頭筋(だいたいしとうきん・太ももの前にある大きな筋肉)です。同じ重さのペダルを踏んでも、膝の角度が深いだけで大腿四頭筋の負担は大きくなります。サドルを少し上げると楽になるのは、筋力がついたからではなく、この距離が縮まったからです。
お尻の筋肉は上体の角度で使えるかが決まります
ペダルを踏み下ろす力のもうひとつの担い手が、大殿筋(だいでんきん・お尻の大きな筋肉)です。この筋肉は、脚の付け根を後ろへ伸ばす働きをしています。股関節がある程度曲がった位置から伸ばすときに、力を出しやすい筋肉です。
上体をまっすぐ起こして乗ると、股関節はあまり曲がりません。大殿筋は力を出しにくい位置から動き始めることになり、その分を太ももの前が引き受けます。上体をほんの少し前に倒すだけで、お尻が仕事に参加しやすくなります。前かがみになる必要はありません。おへそを少しハンドルに近づける程度です。
脚を後ろへ押す力が大事なのは、歩くときも同じです。歩くと疲れる原因でも、推進力は後ろ脚の押しから出ることをお伝えしています。
漕ぎ出しは脚にとって階段と同じです
止まった状態から速度を出すには、その速度に見合うエネルギーを脚で作り出す必要があります。人と自転車を合わせて80kgとして、時速15kmまで加速するのに必要なエネルギーを計算してみます。これは同じ80kgを約90cm持ち上げるのとほぼ同じ量で、階段なら5段分に当たります。
そしてブレーキをかけるたびに、作った速度は熱として捨てられます。信号で10回止まれば、それだけで階段50段分を上ったのと近い量を、平らな道で使っていることになります。子どもを乗せていれば重さが増える分、1回あたりの量も増えます。
この計算から見えるのは、疲れを減らすには「止まる回数」と「漕ぎ出し方」を変えるのが一番効くということです。体力を増やすより、ずっと早く結果が出ます。必要な体力の量そのものを減らす考え方は、階段で息切れする原因でも取り上げています。
そのままにするとどうなるか
毎日の通勤や送り迎えで自転車に乗る方は、同じ偏りが毎日積み上がります。太ももの前ばかりを使う乗り方が続くと、お尻の筋肉は使われないまま、太ももの前だけが張りやすい状態が定着します。
この偏りは自転車を降りても残ります。階段や坂道で太ももの前が先にきつくなったり、立ち上がるときに膝に頼る動きになったりします。自転車の上で決まった使い方が、歩く・上る動作にもそのまま持ち込まれるということです。
もうひとつは、自転車そのものを避けるようになることです。乗ると疲れるから歩く、歩くと時間がかかるから車にする。移動で身体を動かす機会が減るほど、少し動いただけで疲れる状態に近づきます。運動するとすぐ疲れる原因と同じ流れです。
今日から変えられる乗り方
ここまでの内容から、打てる手は3つに整理できます。どれも自転車を買い替えず、明日の通勤から試せるものです。
1. サドルを1cmずつ上げる
サドルが低いと感じても、一度に大きく上げるのは避けてください。止まったときに足が届かず、ふらつく原因になります。1cm上げて数日乗り、慣れたらもう1cm。この順番で進めます。
- 上げる目安:ペダルが一番下に来たとき、膝が軽く曲がっている高さ
- 上限の目安:止まったとき、片足のつま先がしっかり着く高さまで
- 止まり方:止まる直前にお尻をサドルの前へずらし、片足から着く
子どもを乗せているときや、足が着かないと不安な方は、無理に上げなくてかまいません。その場合は、次の2つを優先してください。
2. 止まる前に軽いギアへ戻す
変速つきの自転車なら、止まる手前でギアを軽くしておきます。止まってからでは変速できない自転車もあるので、ブレーキをかけ始める前に変えておくと確実です。漕ぎ出しは軽いギアで2、3回転し、速度に乗ってから重くします。
もうひとつは、止まる回数そのものを減らすことです。信号の手前で早めに力を抜き、ゆっくり近づけば、青に変わって止まらずに済むことがあります。ブレーキで速度を捨てる回数が減るほど、漕ぎ出しの回数も減ります。
3. 踏むのは時計の2時から4時まで
ペダルの動きを時計に見立てると、力が効率よく伝わるのは、ペダルが前に来ている2時から4時あたりです。一番下の6時まで踏み続けても、ペダルを回す力にはほとんどなりません。
4時を過ぎたら踏むのをやめ、その脚の力を少しだけ抜かずに残しておきます。上がってくる脚を「乗せたまま」にしないだけで、反対の脚の仕事が軽くなります。引き上げる必要はありません。ペダルに体重を預けきらない、という程度で十分です。
セルフケアで届きにくいところ
乗り方を変えても、お尻がうまく使えない方がいらっしゃいます。上体を前に倒しても、脚の付け根が硬くて股関節が曲がらない。あるいは、お尻の筋肉に力を入れる感覚そのものがつかめない。この場合、乗り方だけでは限界があります。
もうひとつは、左右差です。片側の太ももだけが張る方は、乗り方ではなく股関節や足首の動きに左右差があることが多いです。自分では両脚を同じように動かしているつもりでも、実際には違います。運転で疲れる原因でもお伝えしたとおり、疲れは働いている側から先に出ます。
ここは他人に見てもらったほうが早い部分です。浦和でパーソナルトレーニングを受けられるLIMITED浦和店では、股関節がどこまで曲がり、どこまで伸びるかを左右で測ってから進めます。
受診をおすすめするサイン
自転車の疲れの多くは乗り方と身体の使い方で説明がつきますが、次のような症状があるときは、先に医療機関を受診してください。
- 漕いでいる最中や降りたあとに、膝や股関節に痛みが出る
- 脚にしびれがある、または力が入りにくい
- 少し漕いだだけで息苦しさや胸の痛み、動悸がある
- 以前は平気だった距離で、急に疲れるようになった
- 休んでも疲労感が数週間続き、体重の減少や発熱がある
関節の痛みやしびれは整形外科、息苦しさや動悸は内科が窓口になります。当店は医療機関ではありませんので、診断や治療は行えません。受診して異常が見つからなかった場合は、検査で異常なしと言われた疲れの考え方が参考になります。
LIMITED浦和店での進め方
当店では、国家資格を持つ理学療法士兼パーソナルトレーナーが最初から最後まで直接担当します。監修者が別にいて指導は別の人、という形は取っていません。
自転車の疲れでご相談いただいた場合は、まず脚を踏み出す動きを見ます。椅子からの立ち上がり、片脚での踏み込み、股関節の曲がる角度と伸びる角度。この3つで、太ももの前とお尻のどちらに仕事が寄っているかが分かります。
そのうえで、硬くなっている股関節には整体で動く範囲を戻し、そのあとにお尻の筋肉を使う運動を入れていきます。動く範囲が戻っても、使い方を身につけなければ自転車の上では元の漕ぎ方に戻るためです。キツい筋トレは行わず、軽い運動が中心です。
自転車で疲れた日に運動していいのか迷う方もいらっしゃいます。その日の身体の反応で決められますので、疲れてる時は運動すべきかの見極め方も参考にしてください。
よくある質問
電動アシスト自転車にすれば疲れませんか?
漕ぎ出しの負担は大きく減ります。日本の基準では、アシストの力は時速10km未満で最も強く、速度が上がるにつれて弱まり、時速24kmでなくなります。つまり一番つらい漕ぎ出しを最も助けてくれる仕組みです。ただし、サドルの高さや上体の固め方はアシストでは変わりません。太ももの前だけが張る方は、乗り方の見直しも合わせて行ってください。
子どもを乗せると急に疲れるのはなぜですか?
重さが増える分、漕ぎ出しのたびに必要な力が増えるためです。加えて、ふらつきを抑えようとハンドルを強く握り、上体を固めやすくなります。子どもを乗せる日は、止まる前に軽いギアへ戻すことを優先してください。サドルは無理に上げず、足が着く安心感を保ったほうが、結果的に余計な力みが減ります。
自転車通勤は運動の代わりになりますか?
脚と心肺を使う運動にはなります。ただ、太ももの前に偏った乗り方のままだと、使われる筋肉も偏ります。お尻や体幹(たいかん・胴体)はあまり使われません。通勤を運動として活かすなら、上体を少し前に倒してお尻を参加させることと、週に1、2回は自転車以外の動きを入れることをおすすめします。
まとめ
自転車ですぐ疲れる原因は、体力だけではありません。サドルが低く膝が深く曲がっていること、重いギアのまま発進していること、上がってくる脚を乗せたまま踏んでいること、ハンドルを握りしめていることの4つです。疲れの量は距離より漕ぎ出しの回数で決まり、太ももの前だけが張るのは仕事が片寄っているサインです。打てる手は、サドルを1cmずつ上げること、止まる前に軽いギアへ戻すこと、踏むのを2時から4時に絞ることの3つになります。
お尻がうまく使えない、片側だけが張るといった場合は、身体の側を整える必要があります。浦和のパーソナルジムLIMITED浦和店では、股関節の動きを左右で測ってから進め方を決めます。体験トレーニングで、どこに負担が寄っているかを確かめるところから始めてみてください。
買い物から帰ったあとの家事で疲れが重なる方は、家事ですぐ疲れる体の使い方と4つの工夫もご覧ください。
体験トレーニングのご案内
LIMITED浦和店では、国家資格を持つ理学療法士があなたの身体を直接評価し、整体とトレーニングを組み合わせて不調の根本改善をサポートします。JR浦和駅から徒歩5分・専用駐車場あり。運動が苦手な方も歓迎です。
▶ 体験トレーニングを予約する
お電話でのお問い合わせ:080-1216-7723(営業 9:00〜21:00・不定休)
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この記事の執筆・監修者
本記事は、LIMITED総代表の飯塚勇人(理学療法士/株式会社ゼノフィット)が
執筆・監修しています。
- 氏名:飯塚勇人(いいづか はやと)
- 資格:理学療法士(国家資格)
- 役職:LIMITED総代表
- 所属:株式会社ゼノフィット

