デスクワークの疲労回復がうまくいかない方の多くは、退勤後にまとめて休もうとしています。ところが座り仕事の疲れは、溜めてから抜くほど時間がかかります。この記事では、座っているだけで疲れる身体の仕組みと、就業中・退勤直後・帰宅後という3つの時間帯に分けて「その日のうちに抜く」順番を、理学療法士がお伝えします。良い姿勢を保つほど疲れる理由も解説します。
座っているだけで疲れる理由
デスクワークは身体をほとんど動かしません。それなのに夕方には頭も身体も重くなります。理由は明確です。疲労は「使いすぎ」だけでなく「使わなすぎ」でも起きるからです。
動かない脚は血液を送り返せない
心臓から送られた血液は、重力に逆らって脚から戻ってきます。この戻り(静脈還流)を担うのが、ふくらはぎのヒラメ筋(ひらめきん・すねの奥にある持久力の高い筋肉)と腓腹筋(ひふくきん・ふくらはぎ表層の筋肉)です。歩くたびに縮んで静脈を押し、血液を上へ送ります。筋ポンプと呼ばれる働きです。
座り続けると、この筋ポンプがほぼ止まります。血液は下半身に留まりやすくなり、脚の重だるさが出ます。午後の眠気は気合いの問題ではなく、循環の問題であることが少なくありません。
良い姿勢を保つほど疲れる
意外に思われますが、姿勢を正しく保ち続けること自体が疲労を生みます。背すじを伸ばすには、背中や首の筋肉が弱い力で縮み続ける必要があります。強い力ではないので自覚は出にくいのですが、休みなく働いている点では走り続けているのと同じです。
つまり「正しい座り方」を覚えても、何時間も固定していれば疲れます。必要なのは正解の姿勢を探すことではなく、姿勢を変える回数を増やすことです。
理学療法士の視点|抜く疲れと入れる疲れ
私たちはデスクワークの疲労回復を2つに分けて考えます。「抜く」と「入れる」です。目的も方法もまったく違うため、混同するとどれだけ休んでも手応えが出ません。
抜く=流れを取り戻す
「抜く」は、滞った血流を動かして、筋肉に溜まった代謝産物(たいしゃさんぶつ・エネルギーを使ったあとに出る老廃物)を運び出す作業です。ここで大事なのは、強い運動である必要がまったくない点です。むしろ強い運動は新しい疲労を足します。必要なのは強度ではなく頻度で、かかと上げや数十秒の歩行でも筋ポンプは再び働きます。
入れる=出番を失った筋肉を戻す
「入れる」は、座り続けて出番を失った筋肉に、もう一度仕事を割り当てる作業です。代表がお尻の大殿筋(だいでんきん)と、背中の僧帽筋下部(そうぼうきんかぶ・肩甲骨を下に引く筋肉)です。
これらが休んでいる間、仕事は別の筋肉が肩代わりします。腰や首の表層が代わりに働き続け、そこに張りが集まります。肩や腰がつらいのに揉んでも数日で戻るのは、担当が入れ替わったままだからです。「入れる」は伸ばすことでは起こりません。軽くても、その筋肉に力を出させる必要があります。詳しくは肩甲骨はがし後に肩こりが戻る3つの理由で解説しています。
同じ筋線維が使われ続ける
筋肉は、必要な力の大きさに応じて、動員する筋線維を小さいものから順に増やしていきます。弱い力しか要らない姿勢保持では、いちばん小さく疲れにくいグループだけが、何時間も動員され続けます。交代要員が呼ばれないまま働き続ける状態です。
これを解除するには、はっきり違う強さの動きを一度入れて、動員のパターンを切り替えるしかありません。ストレッチが気持ちよくても物足りなさが残るのは、伸ばすだけでは切り替えが起きにくいからです。だから私たちは「伸ばす」ではなく「動かす」を勧めます。
溜め続けると起きること
その日の疲れをその日に抜けないと、翌朝に持ち越しが起きます。積み重なると、休日に長く寝ても回復した実感が出にくくなります。
- 夕方のだるさが、朝の時点で既にある状態になる
- 肩や首の張りが、休んでも戻りにくくなる
- 腰の重さが出て、座り直す回数が増える
- 運動する気力が出ず、さらに動かない時間が伸びる
最後の項目がいちばん厄介です。動かないから疲れ、疲れているから動けない。この循環に入ると自力で抜け出しにくくなります。眠っても疲れが残る段階の方は、寝ても疲れが取れない3つの原因もあわせてご覧ください。呼吸と自律神経の側から解説しています。
3つの時間帯で抜く設計図
デスクワークの疲労回復は、退勤後の一括処理では追いつきません。就業中・退勤直後・帰宅後の3つに分けて、それぞれ役割を変えます。
| 時間帯 | 目的 | 時間の目安 | やること |
|---|---|---|---|
| 就業中 | 抜く(溜めない) | 30〜45分ごとに60秒 | 立つ・かかと上げ・座り方を変える |
| 退勤直後 | 抜く(切り替え) | 10分程度 | ひと駅分ほど歩く・階段を使う |
| 帰宅後 | 入れる | 10〜15分 | お尻と背中に軽く力を出させる |
就業中は60秒でよい
60秒で十分です。大切なのは長さではなく間隔です。1時間に1回まとめて5分立つより、30分ごとに60秒立つほうが筋ポンプは多く働きます。会議が続いて立てない日は、座ったままかかとの上げ下げを20回。これだけでもふくらはぎは動きます。
退勤直後の10分が効く
1日でいちばん効率がよいのがこの時間帯です。座位から解放された直後に歩くと、滞っていた血流が一気に動きます。浦和駅や北浦和駅をお使いなら、ひと駅分歩く、エスカレーターを階段に替える。それで足ります。逆に、ここでいきなり強い運動を入れるのはおすすめしません。疲れているときの高強度は翌日に残りやすいため、息が弾む程度で止めておきます。
帰宅後は「入れる」に使う
帰宅後は、抜くのではなく入れる時間です。1日中さぼっていたお尻と背中に、軽く仕事をさせます。ここを飛ばしてストレッチだけで終えると、翌日また同じ場所が張ります。ただし就寝直前の強い運動は入眠の妨げになる方がいるため、就寝1〜2時間前までに済ませるのが無難です。
今日からできる3つの動き
器具は要りません。順番も、この通りに行ってください。抜いてから入れる、という流れになっています。
1. かかと上げ30回(抜く)
- 立って、机やイスの背に軽く手を添えます
- かかとをゆっくり上げ、上げきったところで1秒止めます
- 下ろすときは、床に着く直前で止めて次へ
- 30回。ふくらはぎが温かくなれば十分です
速く数だけこなすと筋ポンプはあまり働きません。上げきる位置で止めることが要点です。
2. 座ったまま骨盤を前後に(切り替え)
- イスに浅めに腰かけ、足裏を床につけます
- 坐骨(ざこつ・お尻の下にある硬い骨)を感じながら、骨盤だけを前に倒します
- 次に後ろに倒します。背中を丸めるのではなく、骨盤だけを動かす意識で
- 前後に10往復。胸の高さは変えないようにします
骨盤と背中を分けて動かせる方は多くありません。分けられないと座り直すたびに背中全体で代償し、腰に負担が集まります。姿勢を「変えられる身体」に戻すための練習です。
3. お尻の持ち上げ15回(入れる)
- あお向けで両ひざを立て、足裏を床につけます
- お尻に力を入れてから、腰を浮かせます。順番が逆にならないように
- 上げきったところで2秒止め、ゆっくり下ろします
- 15回。腰ではなくお尻に効いていれば正解です
腰に張りを感じる場合は、上げる高さを半分にしてください。高く上げることではなく、お尻に出番を思い出させることが目的です。
セルフケアで足りないとき
ここまでは、多くの方に当てはまる一般的な設計です。ただし2〜3週間続けても手応えが薄い場合、原因は別のところにあります。よくあるのは、そもそも「抜く」動きが正しくできていないケースです。
初回に見る3つの項目
LIMITED浦和店では初回に次の3点を確認します。いずれも疲労回復が進まない方に共通しやすい項目です。
- 足首がどこまで曲がるか:足首が硬いと、歩幅が出ずふくらはぎが縮みきりません。歩いても筋ポンプが働きにくい状態です
- 骨盤と背中を分けて動かせるか:分けられない方は、座り直しがすべて背中の代償になります
- ふくらはぎがどれだけ続くか:片脚でのかかと上げが何回続くかを見ます。可動域ではなく持久力の問題であることが少なくありません
硬さと弱さでは対処が違います。硬い方に筋力トレーニングだけを行っても進みませんし、弱い方をほぐしても戻ります。どちらなのかを分けることが、遠回りを避ける最短の方法です。
整体とトレーニングを分けない理由
当店が整体とトレーニングを同じ時間に組み合わせるのは、「抜く」と「入れる」を分断しないためです。ほぐして動かしやすくなった直後に、その状態のまま力を出す練習をします。時間が空くと身体は元の使い方に戻るからです。どちらを先に受けるか迷う方は整体とジムどっち?肩こりが戻らない順番を、指導者の選び方でお悩みなら理学療法士のいるジムの選び方をご覧ください。
受診すべきサイン
疲れやだるさの背景に、運動では対応できない原因が隠れていることがあります。次のような場合は、まず医療機関にご相談ください。
- 片脚だけが強くむくむ、痛みや熱感、色の変化をともなう
- 手足のしびれや力の入りにくさがある
- 休んでも改善しない強い倦怠感が数週間以上続いている
- 体重が意図せず減っている、発熱が続いている
- 息切れや動悸が以前より出やすくなった
- いつもと違う強い頭痛がある
片脚のむくみと痛みは、脚の静脈のトラブルで起こることがあります。自己判断で強くもんだり動かしたりせず、内科や整形外科を受診してください。当店は医療機関ではなく、診断や治療は行えません。頭痛と肩こりが同時に出る方は肩こりからくる頭痛|運動していい日の見分け方で判断の目安を解説しています。
よくある質問
Q. 立って仕事ができるデスクにすれば解決しますか?
A. 座りっぱなしよりは有利ですが、それだけでは足りません。立ちっぱなしもまた固定された姿勢だからです。ふくらはぎの筋ポンプは、立っているだけでは働きません。縮んで伸びる動きが要ります。昇降デスクをお使いなら、切り替える回数を意識し、そのたびに脚を動かしてください。大切なのは立つか座るかではなく、同じ姿勢の連続時間を短くすることです。
Q. 疲れている日は運動を休んだほうがよいですか?
A. 「抜く」動きは、疲れている日ほど行う価値があります。歩く、かかとを上げるといった軽い動きは、休んでいるより回復が進みやすい方が多くいらっしゃいます。一方で負荷をかける「入れる」動きは、強い疲労がある日は軽くするか翌日に回してください。判断の目安は、5分ほど歩いて身体が楽になるかどうかです。楽になれば続けて構いません。かえって重くなるなら休息を優先してください。
Q. 運動が苦手でも続けられますか?
A. デスクワークの疲労回復に必要な動きは、息が上がるような運動ではありません。かかと上げやお尻の持ち上げは、運動経験がなくても行えます。LIMITED浦和店にも、運動から長く離れていた方が多くいらっしゃいます。理学療法士が身体の状態を確認し、その方に合う強さと回数から始めます。マンツーマンですので、周りの目を気にする必要もありません。
まとめ
デスクワークの疲労は、動かないことで生まれます。だから回復も、休むことではなく動かすことから始まります。要点を整理します。
- 座り続けるとふくらはぎの筋ポンプが止まり、血液が脚に滞る
- 良い姿勢を保ち続けること自体が疲労源。正解の姿勢より変える回数
- 回復は「抜く」と「入れる」に分けて設計する
- 就業中は60秒、退勤直後は10分歩く、帰宅後に力を出させる
- 2〜3週間続けて手応えが薄いなら、硬さか弱さかを分けて評価する
順番を組み立てにくい、自分がどちらのタイプか分からない。そうお感じでしたら一度身体を診せてください。浦和のパーソナルジムLIMITED浦和店では、国家資格を持つ理学療法士が評価から指導までを直接担当します。JR浦和駅から徒歩5分・専用駐車場ありで、北浦和や南浦和から車でも通えます。体験トレーニングでは、あなたの疲れが「抜けていない」のか「入っていない」のかをその場で確認できます。
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執筆・監修:LIMITED総代表 飯塚勇人(理学療法士)

